人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム
“人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム”は、日本農業遺産認定(平成31年2月)に続き、令和5年7月に世界農業遺産に認定されています。
山深い地域 美方地域は標高1500m級の氷ノ山、扇ノ山から連なる山深い地形です。昼夜の寒暖差が大きく夜露が頻繁に発生するため、夏でも良質な草が育ち、その草を飼料として、古くから但馬牛が飼育されてきました。
牛は山で飼い草で育つ 美方地域には「牛は山で飼い草で育つ」という言葉があり、昔から放牧が行われています。草原性の蝶などの昆虫や、草原を狩り場とするイヌワシが生息し、牛の糞を目的とした糞虫類も数多くみられ、生物多様性が維持されています。
米作りと牛飼い 美方地域の農地のほとんどは、山の斜面の棚田であり、米の生産が行われています。また、米作りでできた稲わらや、畦畔の野草は但馬牛の飼料として利用され、但馬牛の糞尿は肥料として田畑に還元されます。但馬牛は神戸ビーフや他のブランド牛の素牛となり、子牛の生産は美方地域の主要な産業となっています。
牛は家族 美方地域は但馬牛を家族のように大切にしてきました。それは、現在も変わらず受け継がれ、1頭1頭大切に飼育されています。また、地域の教育にも重要な役割を担っています。
良い牛を作ることに熱心 遺伝の法則や遺伝子を知らなかった時代に、良い母牛が良い娘牛を産むことに着目し、蔓植物になぞらえて「蔓牛(つるうし)」という血統集団が谷ごとにつくられました。和牛が肉専用となった時代には、もともと肉質で評価の高かった但馬牛は、全国の和牛の改良に利用されました。現在でも美方地域は地域内の血統にこだわった改良を続けており、和牛の重要な遺伝資源が保存されています。
登録システムの始まり 明治31年に各村役場に牛の戸籍にあたる「牛籍簿」がつくられました。これは和牛の登録システムの元祖となっています。古くから続くこの登録は改良に利用されているだけでなく、牛の産地としての信頼性を高めています。
世界農業遺産(GIAHS)とは 世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それと密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域(農林水産業システム)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)により認定されます。
兵庫美方地域 兵庫美方地域は、香美町と新温泉町からなり、兵庫県の北西部に位置し、鳥取県との県境にあります。北は日本海に面しており、冬は積雪が多い豪雪地帯です。但馬牛は神戸ビーフの素牛として有名であり、牛を家族のように大切に飼育する地域として、数多くの名牛が生まれました。
以上、「美方郡産但馬牛」世界・日本農業遺産推進協議会の資料を引用しました。
投稿者:八田地区集落支援員
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